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◆感情出して痛み軽減
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「木久蔵さんの落語におなかがよじれるほど笑ったわね」「後でおいしいごちそうも出て、至れり尽くせりだったわね」 東京都文京区の日本医大リウマチ科。入院中の且味(かつみ)百合子さん(77)と折原育代さん(70)はにこやかに振り返った。 同科教授の吉野槙一さん(65)は、落語家の林家木久蔵さんらを招き、定期的に落語の独演会を開いている。40年間リウマチ治療に当たる吉野さんは、患者の気分が明るい時は痛みが軽く、悩みを抱えている時には激しいことに気がついた。 そこで、落語を聞いて思いっきり笑うことで、患者の体調に変化が表れるかどうか、調査を開始。独演会の前後に血液検査をして、自律神経やホルモン、免疫にかかわる物質の値を測った。 結果は予想通り。リウマチの症状の重い患者ほど、変化が大きく、落語を聞いた後は正常値に近づいた。何度繰り返しても同じ効果が証明され、米国の医学誌にも論文として掲載された。 心と病の関係に科学のメスを入れようと始めた実験だったが、その結果は吉野さんの日常診療にも影響を与えた。「病気だけに気を取られずに、患者さんを丸ごと人間として受け止める。そのための細心の配慮が必要と改めて実感した」。病棟での患者との何気ない会話から、意識的に心の動きを探るようになった。 ある日突然発病し、激しい痛みとともに関節が破壊されていくリウマチ。患者は痛みと闘うだけでなく、身体が不自由になっていくことで人生そのものの変化にも直面する。 銀座ですし屋を切り盛りしていた折原さんは、リウマチの進行とともに引退を余儀なくされ、介助がなければ家事や入浴も困難になった。「つらいこともあるけれど、周囲の人に感謝して、明るく生きなくちゃ。吉野先生の前向きな姿勢にいつも力づけられます」とにっこり。且味さんも「弱虫な私ですが、先生や周囲の患者さんに励まされるの」と笑顔を見せる。 最近では、木久蔵さんの落語の代わりに、涙を誘う人情話や、背筋が凍る怪談を聞いてもらい、同じ実験を試みた。なんと笑える落語を聞いた時と同じ効果があることがわかった。笑いでなくても、話に引き込まれ、夢中になることで症状が改善するらしい。 人生は山あり谷あり。笑えない気分の日もやって来る。そんな時は思いっきり涙を流して泣きなさい、と吉野さんは患者に勧める。「よく笑い、よく泣き、よく眠る。それが心と身体のバランスを保つ秘けつだと思うのです」 リウマチと笑いの実験 吉野さんたちはリウマチ患者に落語を聞いてもらい、話の前後で血液中の免疫関連物質などがどう変化するかを調べた。その結果、ストレス刺激で増えるホルモン「コルチゾール」と、関節の炎症を悪化させる「インターロイキン6」の値が落語を聞いた後は明らかに下がることが判明した。 |
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